ナチキシタドクガの交尾器
冷蔵庫から蛾が出てきた。
去年飼育して羽化した子を入れたまま、忘れていたのだ。
幼虫は昨年紹介済み。→「7月のいもむし、毛虫など」
本種は性的二型を示し、♂♀で模様が違う。
♀は名前の通り、下翅が黄色のおしゃれな蛾である。
♂は特に特徴がない。
言ってしまえば、ブドウドクガだかカシワマイマイだか、よく判らない。
これらの♂は立派な羽毛状の触角を持っており、
一部のぁゃιぃ人達は親しみを込めて「うさ耳ちゃん」と呼ぶ。
それはさておき、冷蔵庫から出てきたうさ耳ちゃんは、パリパリに乾燥したうえに体の脂肪分が溶けて全体に油が染みて黒くなっていた。
標本にするには最悪の状態である。
ということで、交尾器の観察をすることにした。
腹部をはずして、水酸化カリウム水溶液でコトコト煮て
筋肉を溶かし、鱗粉や毛をチマチマと除去。
後方からの正面図。
図鑑などではvalvaを広げた状態の図が描かれている。
これは閉じた状態。
チョイ斜めから。
第9腹節が環状となって交尾器を支える土台となっている。
第9腹節の背板をtegumen(テグメン)、腹板をvinculum(ビンクルム)と呼ぶ。
vinculumの下部に嚢状に膨らんだ部分をsaccus(サックス)と呼ぶ。
tegumenの上端には突起物が付着しており、uncus(ウンクス)と呼ぶ。
uncusは第10腹節背板の変化したものである。
これらの中心に、aedeagus(エデアグス)が収まっている。
aedeagusは精子を♀に送り込むための管で、言うまでもなく、交尾の中心となる器官である。
上の2枚の写真では、aedeagusをはずした状態である。
横から。
aedeagusは普通直線的な棒状であるが、ナチキシタドクガでは彎曲した特徴的な形をしている。
aedeagusは実際は点線の処につながっており、交尾の際はテコのように回転して♀に挿入するようだ。
aedeagusの内部には反転する内袋が入っており、vesica(ベシカ)と呼ぶ。写真では少しはみ出しているが、透明なので分かり難いですね。
種類によってはvesicaに棘を装うことがあり、その数や形が種を区別する重要な形質となることがある。
甲虫のオサムシなどでは、この内袋の形が種を同定する際の決め手になることもあるそうだ。
などと、図鑑の受け売りを書いたところで今日はおしまい。
ではまた。