旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

雨上がりの大移動

日曜日。朝まで降っていた雨がやんだので、いつものお散歩コース。
フユシャクの♀でもくっついてないかいのぉ?と木の幹を見ながら歩いていると、アベマキの幹を2mmあるかないかのダンゴムシがウゾウゾと大量に歩いていた。
近づいてよく見ると、それは脚があって歩けるタイプのカイガラムシだった。
みんなそろって、木の幹を上へ上へと登っていく。

オオワラジカイガラムシDrosicha corplentaの1齢幼虫だ。

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オオワラジカイガラムシは、初夏に落ち葉の間や樹皮下に産卵し、12月に孵化して主にカシ類の樹木に寄生する種類だ。
昨晩の雨が引き金になって、一斉に孵化したようだ。
まわりを見ると、アラカシの幹にもたくさんついている。

オオワラジカイガラムシワタフキカイガラムシ科に属するが、コナカイガラムシ科とも似通っている。この2科は腹部の気門の有無で判別するそうだ。
確認のために、1匹犠牲になっていただいてプレパラート標本にしてみた。

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透過処理すると、風船に手足をつけたような虫である。
幼虫のため判別しにくいが、腹部に小さな気門を認めることができる。

アブラムシやカイガラムシは、口吻が前脚の間から生えているので、カメムシヨコバイ・ウンカ類とは別に「腹吻群」という仲間に分けられているそうだ。(カメムシ類はちょっと変だった。12/30書き直し)

体内にはらせん状に巻いた長い「口針」が透けて見える。
短い口吻でどうやって木の幹から吸汁するのかと思っていたら、ちゃんと長いストローを内蔵していたのね。
口吻の前方の斜めに傾いてしまっているのは、体内にあるポンプのような器官だ。

以下のメモは調べたことの覚え書き。気にしないでください。

腹部気門がある・・・ワタフキカイガラムシ科、ハカマカイガラムシ
腹部気門がない・・・コナカイガラムシ

肛門輪・肛門輪刺毛を欠く・・・ワタフキカイガラムシ
これらがある・・・ハカマカイガラムシ科、コナカイガラムシ

転節と腿節が癒合しない・・・ワタフキカイガラムシ
癒合する・・・ハカマカイガラムシ

簡単な区別点は、
触角・脚が黒色・・・ワラジカイガラムシ
だそうである。これは簡単。ルーペがあれば野外でも判りそう。

ワタフキカイガラムシ科には以下の5属を含む。
ワラジカイガラムシ属Drosicha
ワタフキカイガラムシ属Icerya(イセリアカイガラムシなど)
アカカイガラムシ属Kuwania(鮮紅色、カシノアカカイガラムシなど)
マツモグリカイガラムシ属Matsucoccus
モグリカイガラムシ属Xylococcus

ワラジカイガラムシ属Drosichaは日本産3種。沖縄に未記載種がいるため注意。ただ、実際には細かく調べられていないので、本土でも種類は増えるかも。と、以前カメムシBBSで教えてもらった。