うたわないコオロギ・・・・・・マツムシモドキ
ちょっと涼しい天気が続いていたが、日曜日は一転して蒸し暑かった。
残暑が戻ってきたようだ。
でも、確実に秋はやってきているようで、夜になると街路樹からはアオマツムシ、地面からはオカメコオロギ類の鳴き声がよく聞こえるようになってきた。
さて、日曜日の山の中、
ほとんど人の通らなくなったコースをとって、木の枝をかきわけながら歩いていると、何やら茶色い虫が飛び出して目の前の枝に止まった。
その時手にしていたのはカメラではなく網だったので、ほとんど脊髄反射でネットインしてしまった。
なので生態写真はなし。
網の中には、マツムシモドキAphonoides japonicusがいた。
ここから無味乾燥な室内写真。。。。。
背面
触角が全部写ってませんが、触角長は5cm程ある。
腹面
後翅が長い。飛ぶのは得意そうだ。
産卵管がないので♂ですね。
胸の模様と翅の基部。
なんか胸で睨んでるみたい、、、、
翅脈(しみゃく)が単純だ。発音器官がない。
マツムシモドキはコオロギ界では少数派の鳴かない虫なのだ。
発音器がないので当然鳴かないが、耳はちゃんと前脚にある。
脚にあるので耳はおかしいか?
聴覚器官でいいのかな?(写真矢印)
実は鳴かないマツムシモドキも音をつかって異性と交信しているそうだ。
空気中を伝わる音としてではなく、物体を伝わる振動としての音である。
どうするかというと、♂は大あごを物にあてて後脚の付け根あたりを支点にして体を震わせ、その振動音で♀を呼ぶのだそうだ。
このドラミング方式は、うちのお散歩コースではカメムシもやっている。
→「ミニミニタップダンサー」
この方法は3次元空間に住む樹上性の昆虫にとって理にかなった方法だ。
枝づたいに伝わってくる振動をたどってゆけば良いからである。
地表に住むコオロギの場合、2次元の世界なので方角さえわかればよい。
だから、遠くまで届く鳴き声の方が都合がよさそうだ。
写真を撮っていて腹端になんか挟まっているのに気が付いた。
精包(せいほう)のようだが、えらく巨大である。
直径1.2mm程あろうか。
精包(精球とも言う)というのは、精子の詰まったカプセルで、交尾の際、カプセルごと♀に受け渡す仕組みになっているそうだ。
種類によっては、精包に杏仁豆腐みたいなゼリー状物がついており、♀はこれを好んで食べる。メスがゼリーを食べている間に、精子は受精嚢に移動するそうだ。キリギリスではこのゼリーが結構大きくて、ごくまれに、もぐもぐ食べている♀を見かけることがある。
このゼリーは栄養価が高いそうで、間接的に♀の卵の発育に協力していることになる。
取り出した精包。ゼリーも大量についてきた。
なかなかコストのかかった作品である。
ところで、マツムシモドキよりずっと図体のでかいエンマコオロギの精包はせいぜい0.5mm大と言ったところ。小さければたくさん作れるから、多くの♀と交尾するのだろう。
マツムシモドキは、より少数の♀と確実に受精させる方を選んだのかな?
唄がうまいけれど浮気者のエンマコオロギ。
無口で一本気なマツムシモドキ。
さあ、選ぶならどっち?^^;
以下、図鑑よりマツムシモドキメモ
静岡県以西の本州、四国、九州に分布。
伊豆諸島、小笠原諸島、南西諸島には近縁のアカマツムシモドキAphonoides rufescensがいる。
沖縄・小笠原父島からは、これら2種とは別種と考えられる個体が採れているが、♀のみのため研究されていないとのこと。