旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

ナゾ繭

BABAさんとこのブログを見て、
そういや似たのを見たなぁ、と画像フォルダを発掘。

あった。

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泥か糞を固めたような繭は3mmほど。
今年の3月にビワの葉裏にくっついていたもの。
こちらのも既に羽化済み。
蛾の繭のようにも見えるが、触角や翅、脚のパーツがバラけている。
こういうのを「裸踊」と言うが、鱗翅目ではごくごく原始的な小蛾類でしか見られない特徴である。

分解して幼虫の皮を捜してみた。
で、見つかったが、胴体部分は脚もなくペラペラの皮のみ。
ということで、鱗翅目では無さそう。
固い部分は頭部だけだった。

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これだけだと、確定できないけど、
たぶん、キノコバエ科じゃないかと思う。

ビワの生えていたところは谷筋で湿気は多いし、
ビワの花ガラが残っていたので
それを食べてたのかなァ?

ま、今後の宿題です。

ではまた。

ゴミくずみたいな越冬巣・・・・・・マルギンバネスガ

お散歩行ってなくってネタも無いしドウシヨウ、と思っていたら
飼育中の蛾が羽化してきた。

以下経緯

今年の2月下旬、虫喰い痕のあるウバメガシの葉っぱ。

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昨年の古い食痕か、とスルーしかけて部分的に食痕が新しいのを確認。


裏返すと、

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葉脈から枝にかけて小さな巣が張られていた。
寒くなるまである程度成長し、年が明けて少し暖かい日は活動を再開して新しい食痕を残したのだろう。

お持ち帰りして3月中旬、

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12mm程度に成長した。
頭部が丸っこい幼虫。


4月5日に見ると繭を作っていた。

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蛹は薄緑色。羽化するまでこの色だった。


で、15日に羽化。

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容器の蓋が傷だらけでチョイ見苦しい。


冷蔵庫で少し冷やしてそっと出して撮り直し

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マルギンバネスガ Thecobathra anas
純白の翅に細かなさざ波模様。

後脚を爪先立ちにして頭を伏せており
まるで土下座をしているよう。
本種はこれが通常姿勢。

図鑑を見ると、クリ、クヌギ、コナラ、アラカシ、ツブラジイなどブナ科が食樹。まあ、ウバメガシも食うだろう。

近縁にトガリギンバネスガ Thecobathra eta
ツヤギンバネスガ Niphonympha vera がいるが
マルギンバネスガと比べると前翅前縁が直線的で外縁はわずかにくぼむ。
あと、トガリギンバネスガは平地では見られないそうだ。


おまけ
終齢幼虫の脱皮殻

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ではまた

あの蛾に名前がついた!

以前紹介したシダを食べる名無しの蛾(記事はこちら->「目立つ待避所」)、
ついに記載された。

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シロシダマイコガ Pachyrhabda aedificatrix

書かれているのは「The Insects of Japan 日本の昆虫
シリーズの第7巻「ニセマイコガ科」

労作である。

日本の昆虫シリーズは最初の3冊が2006年に出版された後は十年近く続巻が出ず、もう出ないものと思っていたが、去年からパタパタと続編が出るようになった。

喜ばしい。

で最新巻がニセマイコガ科。
それによると、

従来は Calicotis属の1種とされていたがこの本で Pachyrhabda属に移され、本属は本種を含めて5種新たに新種記載されている。

日本産蛾類標準図鑑に全く紹介されていないグループだけに図鑑以後の最重要文献と言えよう。

同属に退避シェルターを作る種類がもう1種記載されている。
が、こちらは分布が九州以南で食草はホシダ(ヒメシダ科)なので
写真の神戸の種はシロシダマイコガで良いだろう。

検索表を見ると翅の模様でも区別可能である。
詳しくは本を見てね。

あと、過去記事を書いたときに含まれていた Calicotis属もかなり追加記載されており、日本産は9種(うち新種が7種)となっている。
これらはすべて各種シダ類の胞子喰いだそうだ。

ではまた

モンムラサキクチバの♂交尾器

ツイッターにも貼ったけど、この間の散歩で見かけた蛾。

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モンムラサキクチバ Ercheia umbrosa
図鑑を見ると斑紋変異が結構ある種類みたい。
年2回、5・6月と7-9月に成虫が見られるそうだから
3月に見られるのはちょっと早い。
蛹越冬するそうだから、フライングしたのかも。

ネタもないので交尾器を見てみた。

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モンムラサキクチバ Ercheia umbrosa  ♂交尾器側面

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モンムラサキクチバ Ercheia umbrosa  ♂交尾器、
ファルス(挿入器)を外してバルバを拡げて腹面から。

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モンムラサキクチバ Ercheia umbrosa ファルス
内部にベシカ(vesica)と呼ばれる膜質部がおさめられている。
甲虫などでは内袋とか呼ばれることが多いかな。


反転してみた。

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意外と複雑な形。

反対側

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膜質部の表面のトゲトゲはコルヌティ(cornuti)という。(複数形はコルヌツス(cornutus))

♀の交尾器もこれに対応した形になっているのであろうか?
と思って「みんなで作る日本産蛾類図鑑」の姉妹サイト「Digital Moths of Japan」の該当ページを見たら♀の交尾器の画像があったけど、特にへんてこな形はしてなかった。

フシギ

みんなで図鑑は更新が止まった状態であるが、Digital Moths of Japanの方は地味に少しずつ画像が更新されていて交尾器の画像が増えたりしているのでなかなかに便利。

ではまた

ミナミハネオレホソバエ

日曜日、林の中のお地蔵さんに見慣れないハエが歩いていた。
取りあえず写真を2・3枚撮って確保。

が、歩いているのを日陰の自然光で撮ったので全部ピンぼけ。。。

ということで標本写真。

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ミナミハネオレホソバエ Strongylophthalmyia crinita

顔。

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触角第3節は淡色で毛も白いのでよく目立つ。
小顎鬚(maxillary palpus)にはうろこ状の毛が生えている。

前翅

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肩切目は無いがSc切目はある(矢印)。

無弁類のハエというのは判るが適当な科を思いつけない。
強いて言えばハネオレバエ科が近いけど折れ目が見当たらない。
同科でネットを検索しても出てこない。

仕方がないので北隆館の改訂版日本昆虫大図鑑3巻の検索表をたどる。
するとハネオレバエ科の近くの
マルズハネオレバエ科 Strongylophthalmyiidae に行き着いた。

そこで論文検索サイトの「CiNii」でStrongylophthalmyiidaeを検索すると、
The Genus Strongylophthalmyia HELLER (Diptera, Strongylophthalmyiidae) from Japan, with Descriptions of Two New Species」というのがヒットし、
論文をつらつら眺めるとミナミハネオレホソバエ Strongylophthalmyia crinita と同定できた。

論文の英語を超訳すると、上雄板付属物が奇妙に屈曲する、と書いてある気がした。
交尾器の図版をみると、左右不相称な突起がくにょくにょ伸びているのが描かれている。

採集品の腹端部側面

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矢印部がそのへんてこな突起。

同じく後方から

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乾燥して突起が交差しているが左右不相称なのが判る。

ところで、、、
和名が判ったところであらためてネットを検索すると
いつも見に行ってる明石の虫サイト「明石・神戸の虫 ときどきプランクトン」に同種と思われるものがすでに紹介されていた。
該当記事->「ハネオレホソバエ科の一種(?ミナミハネオレホソバエ Strongylophthalmyia sp.)

見ていたはずなのにすっかり忘れていた。。。
美しい生態写真を見たい方は上のリンクをクリックしてください。

科名はハネオレホソバエ科になっているが、マルズハネオレバエ科の旧名で同じStrongylophthalmyiidaeのことである。
というかマルズハネオレバエ科が北隆館の改訂版の図鑑で初めて使われている新称である。


ではまた