イセリアカイガラムシの1齢幼虫
昨年11月の終わり頃、落葉したアカメガシワにくっついていた虫。
イセリアカイガラムシ Icerya purchasi ♀成虫
オーストラリア原産で、世界中の熱帯・温帯に分布を拡大した昆虫。
日本には、明治の末頃にアメリカや台湾から輸入した柑橘の苗木に
くっついて日本にやってきて、一時は柑橘栽培地帯に壊滅的な被害を与えたそうだ。
現在では天敵のベダリアテントウが導入され被害は劇的に減少し、天敵導入の珍しい成功例となっている。
普通カイガラムシは、成虫になると固着生活となり移動できないのだが、
イセリアカイガラムシは成虫になっても足があり、移動可能だそうだ。
さて、写真のカイガラムシ、生活の場が落ちてしまったのでは、
移動できても限度があるだろうし、ただ死を待つだけの運命である。
だが、腹部の後ろには白いフカフカの蝋状物質を伸ばし、中に卵をぎっしり詰め込んでいる。
これを何となくフィルムケースに入れて持ち帰っていた。
このことを忘れかけていたのだが、昨日ふと見ると、
中で黒っぽいツブツブが散らばっているのに気が付いた。
孵化したのかい、どれどれと拡大してみると、
赤レンガ色の体に、触角と脚は黒。 ダニみたい。
おしりに長い毛が3対。
触角の付け根あたりにチイコイ眼がある。
何も食べてないはずなのだが、背中にはもう
蝋状物質が吹き出ている。
透過処理して光学顕微鏡でのぞいてみた。
1目盛りは0.025mm。
触角は6節。成虫になると11節になるそうだ。
脚は付け根から、短い基節・転節、長い腿節・径節、ふ節は1節、爪は1本。
赤丸のところをさらに拡大。
丸い穴から、カールした蝋状物質が吹き出している。(矢印部)
これを、多眼円形分泌孔と言うそうだ。
ここから繊維状の蝋状物質を出して体を覆い、身を守ったり、卵を保護したりするのだろう。
オマケ、
歩くイセリアカイガラムシの1齢幼虫。
のったらのったらと、ササラダニ的な歩き方である。