ハエ類の胸部背面の毛について
前々回の記事でハエの背中の刺毛について書ききれなかったのだが、
図だけは作っていた。
解説をやっと書いたので、図をアップ。
トゲアシイエバエ属の1種の胸部背面
(図をクリックで拡大表示)
ハエ類の中胸背板は盾板(sc)、小盾板(sct)、下小盾板に分かれるが、
下小盾板は背面からは通常隠れて見えない。
以下、写真の記号説明。
図の略号;英語表記;日本語表記の順に書いてます。
略号と英語表記は「日本のイエバエ科」、
日本語表記は「新訂 原色昆虫大圖鑑 III」を参考に作成。
英語表記の()内は「新訂 原色昆虫大圖鑑 III」での表現。
こういう専門用語は分類群によって違う場合があるし、
年代によって表現が変わることもあるので注意が必要である。
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sc;scutum;盾板
(presutural area;盾板横線前域)
(postsutural area;盾板横線後域)
sut;thoracic suture(transverse suture);横線
sct;scutellum;小盾板
ac;acrostichal bristles;中刺毛
dc;dorsocentral bristles;背中刺毛
ia;intra-alar bristles;翅内刺毛
ph;posthumeral bristles;肩後刺毛
h;humeral bristles;肩刺毛
肩刺毛の生えている部分は「humerus(humeral callus)肩瘤」と言い、
後前胸背板の両側部が盾板につながったもので、本来の中胸ではない。らしい。
np;notopleural bristles;背側刺毛
sa;supra-alar bristles;翅背刺毛
pa;post-alar bristles;翅後刺毛
ls;lateroscutellar bristles;小盾板側刺毛
ds;discoscutellar bristle;小盾板背刺毛
as;apicoscutellar bristle;小盾板端刺毛
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「日本のイエバエ科」では「bristle」、
「新訂 原色昆虫大圖鑑 III」では「seta」と表現されているが、
これはどちらも意味は同じで太い毛のことである。
イメージ的にはbristleが剛毛で、setaが刺毛という感じ?
ハエ類の記載文を読んでいると、胸部の解説に
「ac 0+1;dc 2+3;ia 0+2;pa 2;h 2-3;・・・・・」
などとナゾの暗号が書かれている。
「ac 0+1」というのは、「中刺毛は盾板横線前域に0本、盾板横線後域に1本生えている。」
と言う意味。
「dc 2+3」というのは、「背中刺毛は盾板横線前域に2本、盾板横線後域に3本生えている。」
と言う意味。
「h 2-3」は「肩刺毛は2本から3本生えている」という意味。
ハエの分類にはこういう毛の数が重要で、背面だけでなく、
側面の毛や、脚の毛も見る必要があるそうだ。
慣れた人ならスイスイ読めるのでしょうけど、
私なんかはものすごく時間がかかった末に結局判らない。。。。なんて事になります。
さてさて、本年もおつきあいありがとうございました。
今年の記事はこれで最後と言うことで、
来年もよろしくお願い申し上げます。
それでは