旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

空飛ぶ哺乳類、、、の名を持つ蛾

日曜日、これ↓を見かけた。

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コウモリガ Endoclita excrescens

たまたま、遊歩道のモルタル壁に止まっていたから判ったものの、
自然界では樹の枝にぶら下がって「引っ掛かった枯れ葉」、の振りを
しているので、老眼の私は過去何回も見落としているはずである。


斜め上から。

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カッコいい
足はもふもふ
あまり蛾らしくない。
ナミケダニを連想した。

中胸盾板とか肩板などは鱗粉がハゲてしまってキチン板が露出している。
大分飛び古した個体のようである。

つついたら落っこちてバサバサもがいてる。
セミ的な羽音である。

この蛾は歩くことはほとんど無いようで、前脚と中脚は普通だが、
後脚は萎縮している。

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その代わり、♂の後脚にはフサフサの毛が刷毛状に列生している。
これは発香毛と呼ばれており、コウモリガの♂は集団飛翔し、
そこに♀が飛来して交尾に至るそうだ。


コウモリガは割りと原始的な種類とされており、
一般的な蛾に見られる翅刺(しし、前後の翅を連結する器官。拙アルバム参照)がない。

代わりにコウモリガでは前翅後縁に翅垂と呼ばれる突出部がある。

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これは翅底骨が伸びたもので、従来は原始的な翅の連結装置だと考えられていたが、飛翔中の動画を検討した結果、後翅を挟んでおらず連結装置では無い事が判っている。


で、その生活は超放任主義である。

いくら虫けらと言えど、多くの蛾は食草やその近くに
産卵するものであるが、コウモリガは夕暮れに低空飛翔しながら
卵をばらばらに地表に産み落とすとのこと。

卵数は大型の個体で1万個。
産卵習性がテキトーなので、その分、多産なのだろう。


ただ、親がダメダメだと子供はしっかりするもので(?)、
幼虫はバイタリティーあふれる生活をする。

農業害虫辞典を見ると、ほとんどの作物にコウモリガが登場する。
抜き出すと、ムギ、トウモロコシ、ナス、トマト、ジャガイモ、ホップ、タバコ、イチゴ、リンゴ、ナシ、モモ、ミカン、チャ、オリーブ、ブドウ、クリ、カキ、ビワ、キウイなど各種果樹、花木、庭木、街路樹、花卉、etc.
ビワなどは果実にも食入るそうである。

温暖地でトウモロコシなどに食入した場合には年内に羽化、産卵し卵越冬。
樹幹や多年生草本に食入した場合には中齢幼虫でもう一度冬を越し3年目の夏~秋に羽化。

孵化幼虫は雑草の葉裏を舐めるように食害し、その後、ヨモギイタドリヒメジョオン、ギシギシ、アカザ、ワラビなどの茎内に穿孔し、7~8月以降には樹木に食入する。
この、移動しながらなんでも食害する性質のため、
送電線を齧る事による停電被害も報告されているそうだ。

侵入口は木屑や糞を糸で綴って蓋をする。

おまけ
以前見たコウモリガ幼虫によるクリの被害。

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もっこりとしたコウモリガの巣の蓋。


めくると、

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糸で綴った木くずの蓋。
中にはトンネルが続いていた。

ではまた