旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

けったいな単眼・・・・・ヒロズハヤバチ

9月9日、ハチがヒメツユムシを抱えて運んでいるのを見た。
なんとか写真を撮ろうと追いかけているうちに藪の中へ、、、、orz

がっくりしながら歩いていると、似たハチが ふいいぃぃ~ と飛んできたので、お散歩ネットで確保。

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ヒロズハヤバチ Tachytes latifronsと同定してみた。

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2013年8月9日追記
今年同じ場所でヒメハヤバチの♂が採れました。
と言う事でこの写真の♀はヒメハヤバチの可能性が高そうです。
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標本にしたらあれだけど、生時の複眼はヒスイ色のとてもきれいな緑色をしたハチである。

ヒメハヤバチ Tachytes fruticis に似るが、頭部はより幅広く、頭頂の複眼間の距離は、触角第3節より長い。のが区別点だそうだ。

以下、「つねきばち」と言う専門雑誌に載っていたハヤバチ属の区別点。

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1. 腹部第1~4節の後縁に銀白色の毛帯を持つ。 ->2
(2~3節の2本の銀白毛帯のみ・・・オオハヤバチ Tachytes sinensis

2. 脚の大部分は黒色。 ->3
(脚の大部分は赤黄色・・・アカアシハヤバチ Tachytes modestus

3. 頭頂の複眼間の距離は、触角第3節より長い。 ->ヒロズハヤバチ
(短い・・・ヒメハヤバチ Tachytes fruticis(脚の付節は黒色))
(短い・・・ニッポンハヤバチ Tachytes etruscus(脚の付節は淡褐色))
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ヒロズヒメハヤバチ?の頭部拡大。

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3個の単眼のうち、後ろの2個(後単眼)がコンマ形に変形している。
有剣蜂類の中でこんなけったいな後単眼をしているのはハヤバチ属のみのようだ。
だからこの単眼の特徴があれば、いちいち検索表をたどらなくてもハヤバチ属に決め撃ち出来るみたい。


ヒロズハヤバチは分類上、ミツバチ上科アナバチ群、ギングチバチ科、ハヤバチ属に分類される。

以下は「南西諸島産有剣ハチ・アリ類検索図説」からの区別点の抜き書き。

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有剣類はセイボウ上科、スズメバチ上科、ミツバチ上科を含む。

ミツバチ上科アナバチ群Apoidea Spheciformesの特徴

翅があり、後翅に翅脈で閉じられた翅室がある。
前胸背板と肩板は離れており、中胸背板と中胸側板は接する。
体毛は羽毛状にならず単純で、後脚第1付節は他の付節と同じ幅。


アナバチ群はドロバチモドキ科、ギングチバチ科、アナバチ科、フシダカバチ科、セナガアナバチ科、アリマキバチ科を含む。

ギングチバチ科Crabronidaeの特徴

前翅の縁紋は第1中室より明らかに小さい。
(前翅の縁紋は第1中室と同じ長さかより大きい・・・アリマキバチ科)
前胸は前方に伸長せず、通常の形態。
(前胸は前方に伸長する・・・セナガアナバチ科)
腹部の節間はくびれる事はない。
(腹部の節間は強くくびれる・・・フシダカバチ科)
後翅の臀垂は小さく、腹部に柄はない。
(後翅の臀垂は大きく、腹部第1節の前半は柄状になり、柄は腹板のみからなる・・・アナバチ科)
中脚の脛節刺は1本
(中脚の脛節刺は2本、中胸背板後側縁付近に斜行する隆起線がある・・・ドロバチモドキ科)


ギングチバチ科はハヤバチ属、ヌカダカバチ属、コオロギバチ属、ケラトリバチ属、コトガタバチ属、ナミギングチバチ属、サメハダギングチバチ属、ヒメギングチバチ属、ホソギングチバチ属、クモカリバチ属、ジガバチモドキ属を含む。

ハヤバチ属Tachytesの特徴
複眼の内側はえぐれない。
前翅肘室は3個。
後単眼は変形し、輪郭は不明瞭。
額の上半分から頭頂部にかけて複眼に沿った隆起はなく、前伸腹節は中胸より短い。
後単眼は著しく変形し、コンマ状。
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ところで、この間購入した「狩蜂生態図鑑」を読むと、ヒロズハヤバチは、ササキリモドキ科を狩るとある。

冒頭で取り逃がしたハチの獲物のヒメツユムシは、ツユムシ科ではなく、ササキリモドキ科。
たぶん逃がしてしまったハチもヒロズハヤバチだったのかも知れない。

ではまた。