旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

俺の嫁!・・・フクラスズメ

○○は俺の嫁
とか言ってるオタクのオニイサンが世の中に蔓延してますが、
それを物理的な達成している虫のお話し。

一昨年、建物から出られずに死んでいたフクラスズメを拾ったので、
交尾器を見てみた。♂だった。

バルバを広げて腹面から(ファルスは除く)

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同側面

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ウンクスが鳥の頭のよう。

ファルスの中に透けて見えるコルヌティが
黒く目立っていた。

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反転させるとそれはバラバラになって拡がっていく。

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なんじゃこら?で
ほっぽっていたのだが、
去年発行されたばかりの「日本の鱗翅類」をパラパラ眺めていると、
「蛾の中にはコルヌティが外れやすく、交尾の際、♀の交尾嚢に残り、
それ以降の交尾を邪魔する機能を持つものがいる。」と書いてある。

ハタ!

本には実際の例は書いてなかったが、フクラスズメのコルヌティは
そのためにたくさんあって、しかも外れやすくなっていたのか。


拡大すると、細切れの鉄条網みたい。

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1目盛りが0.01mmだから0.3~0.4mmくらい。

こんなものが絡まっていたら、もし次の♂が交尾しても、
精子を奥まで送り込めないだろう。


あとは、♀の交尾嚢にこの♂のコルヌティが見られればオモシロイなぁ、と


思っていたら、今週たまたま仕事先のビルの屋上階の階段に、
出られなくなって死んでいるフクラスズメを見つけた。
これがラッキーなことに♀。
(ラッキーは不適切な発言でした。)

解剖。

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ありました。

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拡大

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一目盛りが0.025mm。

でも思ったより少ない。

閉じ込められて死んだ個体なのでたまたま少なかったのかな?
それとも複数回交尾したラッキーな♂がいて、
コルヌティを使い切っていたとか?

でも、確かにメスの交尾嚢にコルヌティが残されているわけで、
フクラスズメの「俺の嫁」作戦は信憑性が高いとおもう。

こういう♂の作戦は他でも知られていて、有名どころでは
ギフチョウの交尾栓とかありますな。
ギフチョウではニカワ状の物質を交尾口を塞いでしまうという。
後ちょっと違うがトンボの仲間では、ブラシ状の器官があって
自分より以前に交尾した♂の精子をブラシでかき取ってから交尾するという。

虫達の♂、必死すぎ


おまけ

フクラスズメ♂の腹端

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白い毛束。(下の矢印)
引っ張り出すとツンとした刺激的な芳香がする。
♀と交尾するときのなだめ物質だろうか?

腹部背面にあるギザギザ。

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図鑑にも存在は記されてあるが、機能については判らないとのこと。

誰か調べない?

ではまた

フクラスズメの幼虫は以前紹介済み
いもむしのおしり♪
いもむしのおしり解答