アケビコノハの♂交尾器
今日は需要の低い話題。
今年は目玉模様がカッコいいアケビコノハの幼虫を飼育していたのだが、
羽化したときに止まり木から落ちてしまったらしく、
翅がくしゃくしゃの成虫になってしまった。
ショボーン
こうなってしまうと逃がすわけにもいかないし、
かと言ってポカリやカルピスで飼育するほどやさしい人間でもないので、
交尾器の標本になっていただくことにした。(悪魔)
こんなの
アケビコノハ♂の交尾器
構造が解りにくいので、挿入器を外して開いたのがこちら。
挿入器(Phallus)はこんな感じ。
挿入器は蛾の研究者は大概エデアグスと呼んでいたが、本来エデアグスは挿入器の一部分を指す言葉だそうだ。
なので正式には挿入器全体のことはファルスと言うのが正しいそうだ。
このファルスの中に袋があり、交尾の際に反転して伸び、
精子を♀の体内に送り込む。
この袋をベシカ(vesica)と呼び、しばしば内面に様々な形や数のトゲを持つ。
このトゲをコルヌツス(cornutus)と呼び、
近縁の種類を見分ける際の重要な区別点となることがある。
コルヌツスなどの内部構造をよく観察するには反転させなければならない。
で、極細の先を曲げた柄付き針でチマチマ引き出したりするのだが、今日は別の方法。
マイクロピペットのチップをライターであぶり、ピュウーと細く伸ばして適当なところで切ったものを用意する。これを輸精菅側に差し込んでプッと吹くのである。上手くいくと一瞬で反転できる。
今回は途中で穴が開いて失敗し、柄付き針でチマチマ引き出した。
でこうなった。
アケビコノハでは意外に長い袋が内蔵されている。
画像中の記号の解説は下記
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tg:テグメン(tegumen)
・・・・・・・・第9腹節背板由来の半環状の硬化片
vin:ビンクルム(vinculum)
・・・・・・・・第9腹節腹板由来の半環状の硬化片
sa:サックス(saccus)
・・・・・・・・ビンクルム腹中腺部の前方への陥入突起
un:ウンクス(uncus)
・・・・・・・・テグメンの頂上部で関節(または融合)し、後方に伸びる第10腹節背板起源の遊離突起
gn:グナトス(gnathos)
・・・・・・・・テグメンの後縁と関節した1対の突起で、ウンクスとソキウスの関節部の腹側方に位置する。
sca:スカヒュウム(scaphium)
・・・・・・・・チューバ・アナリス(肛管)背方の硬化部
cos:コスタ(costa)
・・・・・・・・バルバ背縁部基半の細長い硬化部
sl:サックルス(sacculus)
・・・・・・・・バルバ腹縁部基半の硬化部
jx:ユクスタ(juxta)
・・・・・・・・挿入器を腹面から支持するディアフラグマ(第9第10腹節の節間膜に由来する腹部末端を閉じる膜質部)の硬化部。側縁部はサックルスと関節する。
ph:ファルス(phallus)
・・・・・・・・挿入器。ペニスのことでアネルス(ディアフラグマ中央の挿入器を取り囲む膜質部)を貫通し、精子を♀の体内に注入する硬化管
zn:ゾーン(zone)
・・・・・・・・挿入器を基部と先端部に区分する環状に取り囲む線
ae:エデアグス(aedeagus, aedoeagus)
・・・・・・・・ファロベースでは挿入器の内壁を形成し、先端部では体外に露出する硬化管
cor:コルヌツス(cornutus,pl.,cornuti)
・・・・・・・・ベシカに生じる刺状、針状の突起。大きさ、形状、数は様々で分類の指標となる。
ve:ベシカ(vesica)
・・・・・・・・エデアグス先端から内方に陥入した膜質部
coe:コエクム・ペニス(coecum penis)
・・・・・・・・前腹部に向かって伸長したファロベース(挿入器の基半部で体腔内にある部分、二重壁構造の硬化管)の盲管
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参考;日本の鱗翅類
種によって様々な構造があり、上記の倍以上の部分名称がある。
興味のある方は参考書を読んでね。
ではまた。