旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

そっくりいもむし・・・ナンカイカラスヨトウとオオシマカラスヨトウ

日曜日のお散歩で見かけた蛾。

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ナンカイカラスヨトウAmphipyra horiei

ずぼらしてケータイカメラで撮った画像。
この画像をツイッターに貼ったところ、すかさずATSさんと言う蛾好きの方からからコメント。
学研の新図鑑によると、環状紋に黒点が表れるのはオオシマカラスヨトウだそうですが?」

なぬ?

帰ってから調べてみると確かにそう書いてある。

なぬぬ?

従来、この2種の外見上の区別点は腹部側面に白い縞模様が有るか無いかでしか判らないとされていた。

つまりシマシマがあるとオオシマカラスヨトウ、無いとナンカイカラスヨトウ。


だからこの蛾を見つけると、痴漢のごとくいちいち横から覗き込んで腹部のシマシマを確認しないと種類をハッキリ決められなかった。

という記憶があったので、「どれどれ、おじさんにお腹を見せてごらん?」とか言って、虫相手にセクハラしながら腹部にシマシマが無いのを確認した上で貼ったのである。


結局数少ない手持ちの標本や図鑑、ネットの画像を見たところ、環状紋に黒点が無ければ確実にナンカイカラスヨトウのようだ。
問題は黒点があった場合、
ハッキリした黒点がある場合はオオシマカラスヨトウみたいだが、ナンカイカラスヨトウでもちいさい黒点のある個体が結構いるようだ。

普通種のくせに難易度が高いのである。

難易度が高いのは幼虫でも同じでとにかくそっくり。
どこかの専門雑誌にこの幼虫の区別点を調べた報文があったはずなのだが、
私は持っていないし、飼育はしても半ば放置状態だった。

ところが件の学研の最新図鑑を読んでいると、幼虫の区別点まで書いてある。

いわく、胸脚が真っ黒で、肛上板(腹端部の尾脚の上辺り)に
黒斑がでるのはオオシマカラスヨトウ、
そうでないのはナンカイカラスヨトウとある。

ほうほう、放置していた過去の飼育品をチェックチェック。

去年の飼育羽化分。

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f:id:insectmoth:20170814201453j:plain  ナンカイカラスヨトウAmphipyra horiei

胸脚は黒点はあるが胸脚全体は黒くない、気門は白、羽化した成虫の腹部にシマシマが無い、と言うことで環状紋にちいさい黒点がある以外は図鑑の記載と一致。

今年の飼育羽化分。

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ナンカイカラスヨトウAmphipyra horiei
環状紋に黒点が無く、完全一致。
こういうのはキモチイイ。
今年と去年の飼育羽化分はナンカイカラスヨトウはかりだったので、近所には1種だけと思ってたんだけど、、、

2006年と2008年に1匹ずつ羽化確認できたオオシマカラスヨトウがいた。

2006年

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オオシマカラスヨトウAmphipyra monolitha surnia
胸脚、気門は黒、肛上板の黒斑は、、、、写真では見え難い。
羽化成虫の腹部にシマシマ


2008年

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オオシマカラスヨトウAmphipyra monolitha surnia
同じく、肛上板の黒斑も見える。



ほうほう、なんだか区別出来そうな気がしてきたぞ。
気門輪はどちらも黒いが、気門の色は白と黒でここでも区別できそうな気がする。


※2011.8.14追記
蛾好きのATSさんより、環状紋内に黒点のないオオシマカラスヨトウがいるという情報をいただきました。
一筋縄ではいかないようです。



実は上記2種以外にもう1種そっくりさんがいる。
シマカラスヨトウがそれ。
本種は他2種と比べて翅の幅が狭く、慣れていれば判別できる。(私は図鑑とにらめっこしてようやく判る)

幼虫では日本産蛾類生態図鑑(講談社,1987)によると、第8腹節の気門だけが白く他は黒いそうだ。ただ、ナンカイカラスヨトウが記載されたのが1996年と新しいので、注意がいりそうである。


まあ何にでも例外は付き物なので、素人の私としては確実にそう、とは言えないことがツラいところである。

なお、この3種の幼虫は腹端背面の突起が尖っているので、他のカラスヨトウ類とは簡単に区別可能である。

ではまた