旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

小蛾類幼虫の毛の配列について。

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3月11日14時46分、大規模な地震が発生しました。
東北地方太平洋沖地震
地震の被害もさることながら、
津波の被害が大きいようです。
一人でも多くの方が無事である様に祈るばかりです。
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さて今週の更新。
先日届いた図鑑「日本の鱗翅類 系統と多様性」。
蛾の研究をするに当たって、決定版とも言うべき書籍である。
「日本の」とあるが、世界の科についての解説もあり、
成虫、幼虫の用語の解説が、過去の図鑑に類を見ないほど
詳細に書かれている。
図鑑部分は過去に紹介されていない幼虫を中心に、
成虫画像を並べて表示してあり、非常に見やすい。
解説のページには線画が多数あり、近似の種の区別が判りやすい。


幼虫の毛の数と配列は、種類によって決まっており、
科や属、種の区別をするときに役立つことが多い。
だから、それぞれの毛には、記号・番号が割り振ってある。

以前の図鑑類(日本蛾類幼虫図鑑、保育社とか)でも
判らなくはなかったが、なぜその番号なのがの説明が無く、
あやふやに理解していた。
今度の図鑑では、番号の明確な定義まで書かれている。

例;幼虫の毛についての解説(抜粋)
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一次刺毛 primary seta:1齢幼虫時から存在する刺毛。
小型蛾類では多くは終齢まで数が変わらない。
長翅毛長刺毛 long seta(触覚刺毛 tactile setaとも言う)と
2014.2.16訂正
微刺毛 microscopic seta がある。

二次刺毛 secondary seta:2齢幼虫以降に追加される刺毛。
大型蛾類に多く、不規則、または一次刺毛の位置に毛束となって生える。

刺毛相 chaetotaxy 刺毛の数、位置を記録したもの。
命名方式は様々に提唱されているが、Hinton(1946)さんが
提唱したものを改良した、Stehr(1987)の方式が一般的。

長翅毛長刺毛の刺毛相

XD刺毛群:前胸背盾の前縁付近だけに出現する2対の刺毛。
XD2はXD1の腹方にある。

D刺毛群:背域に生える2対の刺毛。
D1はD2よりも短い。Dorsalの意。

SD刺毛群:亜背域に生える2対の刺毛。
SD2は非常に短く、SD1は気門の背方にある。Subdorsalの意。

L刺毛群:側域に生える3対の刺毛。
前方から後方へL2、L1、L3の順に並び、L1が最も長く、L3が最も短い。Lateralの意。

SV刺毛群:亜腹域に生える3対の刺毛。
SV1が最も長く、一般にSV2はSV1の前腹方にある。Subventralの意。

V刺毛群:腹域に生える1対の短い刺毛。Ventralの意。

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以前液浸標本にした、プライヤハマキの終齢幼虫。
胴体の刺毛配列をスケッチしておいたものがある。
これに記号を付けてみた。

f:id:insectmoth:20170717175022j:plain


図中のspは気門(spiracle)、Tは胸部(thorax)、Aは腹部(abdomen)のことである。
大きめの画像はアルバム「蛾の成虫、幼虫の各部名称」に貼っておきました。左のメニューからどうぞ)引っ越ししたので最初から大きい画像を貼りました。画像クリックで大きな画像になります。

葉っぱを綴っている幼虫にはいろいろな種類がいるが、
大きく分類するのに重要な刺毛は、前胸のL刺毛。
普通は3本だが、メイガ上科は2本である。
これ、プチ情報。
もちろん他の特徴も加味しなくてはならない。

それではまた。