旧「いもむしうんちは雨の音」置き場

ブロガリサービス終了にともない、「いもむしうんちは雨の音」をこちらに保存しました。

素早く育つ虫

メインのハイキングコースから一本外れたいつものお散歩コース。

コナラの倒木にホコリカビの一種が生えていた。 

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背丈は、1.5cmほど。
たぶんサビホコリの子実体。(自信ナシ)
こいつも、動物だか植物だかよくわからない生活史で、変わっているのだが、それはさておく。

ちょっと思い付いた事があって、これをポンポンとはたいてみた。

いたいた、チビコイ虫。
薄暗い林の中なので、写真を撮るのはサッサと諦めて、持ち帰って写真を撮ることにする。

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マルヒメキノコムシAspidiphorus japonicus 成虫

こいつはヒメキノコムシ科Sphindidaeと言う小さな科に属する、スバラシクはじっこの虫で、変形菌の胞子でしか繁殖しないそうだ。


ヒメキノコムシ科は、今のところ日本産2亜科5種。

保育社の原色日本甲虫図鑑では、3種しか載っていないが、最近、「日本産ヒラタムシ上科図説(昆虫文献 六本脚)」と言う、超マイナーな図鑑が発行されて、それには5種にふえている。

ヒメキノコムシ亜科Sphindinaeに2種。
・クリイロヒメキノコムシSphindus castaneipennis
・ツヤヒメキノコムシSphindus brevis
マルヒメキノコムシ亜科Aspidiphorinaeに3種。
マルヒメキノコムシAspidiphorus japonicus
・サカイマルヒメキノコムシAspidiphorus sakaii
・オキナワマルヒメキノコムシAspidiphorus sp.(学名未決定)

マルヒメキノコムシ亜科の3種は互いによく似ているが、上翅の点刻列が不規則な2列に並ぶのがマルヒメキノコムシで、1列ならば、残りの2種だそうだ。

その他、
マルヒメキノコムシ;体長1.2~1.7mm,黒褐色~暗赤褐色
残りの2種;体長約1.2mm,赤褐色などの差があるそうだ。

(あと、触角の節の割合とか、詳しくは図説を見てね。)


家には、「日本の生物(文一総合出版)」という古い雑誌があるが、その1989年4月号に、林 長閑(はやし のどか・・・イイ名前♪)という甲虫の幼虫の先生が、ヒメキノコムシの生活史について詳しく書いている。

その中で、マルヒメキノコムシについての抜粋
**********************************
産卵から3日で孵化。
胞子を食べる。
孵化から6日目に蛹化。
4日後に羽化が始まる。
卵は0.5mm。体長の約3分の1と大きい。
変形菌(粘菌)の子実体で育つ。
**********************************

あっという間に散ってしまう胞子を利用するだけあって、成長速度もハイスピードである。
次の休みには、いないんだろうなぁ。



その他、形態的なことでは、成虫の大腮に胞子を運ぶポケットがついているそうだ。


解剖して、確認してみた。

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大腮(一目盛り0.01mm)

さらに拡大。

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確かに、付け根の背面に、くぼみがありました。

食べるだけじゃないのね。
原始的な焼き畑農法みたい。

おまけ
解剖したのが♂だったので、交尾器を。。。。

腹部全体。 

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♂交尾器 

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(一目盛り0.025mm)

交尾器先端f:id:insectmoth:20170822094941j:plain

(一目盛り0.01mm)
イカみたい。
近縁種とは形が違うのだろうか?



余談だが、この「日本の生物」と言う雑誌、マイナーな生き物だけを取り上げる挑戦的な雑誌で、お気に入りだったのだが、さすがに3年ほどでネタがつき、「Birder」という鳥さんの雑誌に変わっちゃいました。